明治記念館を出て人首川沿いに歩いて行くと
「えさし藤原の郷 →900m」という案内板が見えた。
1kmないならこれなら歩いていけるなと思って矢印の方向に進む。
明治記念館の屋根を模した3つの塔をもつ水門を通る。
それぞれに螺旋階段がついていて可愛らしい。
さらに進んで民家がまばらに建つ集落にさしかかると
看板に「落石のため歩行者通行止」と書かれている。
とはいえ、看板は道の端に避けられていたし、行くだけ行ってみようかと思っていると
道におじいさんが出てきて、私の顔を見るなり
「佐藤さん?」
と声をかけてきた。惜しいですが違います。
「藤原の郷に行きたいのですが、この先は通行止めなのですか?」と聞くと
「うーん、世が世ならここを通って行けたんだけども。落石のせいで今は無理。」と言われる。
じゃあ諦めて町に戻ります、と言うとおじいさんは少し考えてから
「これからちょっとデートしない?」と言った。ひゃあ。
しゃっきりされているけれども、どう見積もってもかなりのご老体だし
危険なこともなかろうと思って、ご好意に甘えさせていただくことにした。
さらに驚いたことに「日暮里に親戚がいる。日が暮れる里と書いて日暮里って知ってるか?」と聞かれる。
いや、知ってるもなにも地元ですと言うと、
「鈴木という姓の叔父もいて、生きていれば100歳くらいだと思うが生きてるか死んでるかわからない。」と笑っていた。
そんな彼は昭和5年生まれだそうだ。お元気だなあ。
ネイティブの江刺弁であるからして1/3くらいしか聞き取れないのだけども、
要件はだいたい合っているはず。
軽自動車でものすごい坂道をあがって、部落の人たちで管理しているという
義経供養塔と判官桜を見せてくれ、さらに山を越えて5分ほどで藤原の郷まで連れて行ってくれた。
これから踊りの練習があるのでそれまでは暇だし気にするな、と言って
さわやかに去っていった。K野さん、ありがとうございました。
さてそんな地元の方のご好意で連れて行っていただいた「えさし藤原の郷」は
映画のロケなどにも使われている中世の日本を復元したテーマパーク。
思いのほか丁寧に作られている。日光江戸村のようなアミューズメントパークというよりは
もっと時代考証とかもちゃんとして、大河ドラマの撮影に耐えうるクォリティで造られている。
雨でなければもっと丁寧に廻りたかったのだが
バスや電車の時間も気になったのでメインどころだけ見学してほどほどの時間で切り上げた。
帰りはおじいさんに教えてもらったとおり、川沿いに水門を目指して歩き
30分ほどで町なかに戻ってきた。
一面に白い花。この花のものかはわからないが、とても良い香りが漂っていた。
桜のあいだからミズナラが生育している珍しい樹。
わかりにくいのでここだけカラー。
蔵町モールに戻ってきたので入り口にあるおしゃれなカフェで休憩。
バスの乗り場をたずねたら、わざわざ時刻表を調べてくださった。
岩手の人たちは本当にみんな親切だ。バスがくるまですこし時間があったので
蔵の立ち並ぶ路地をふらふらと歩き、始発の「江刺バスセンター」から水沢駅に戻る。
蔵の扉に仁王が彫ってある。この位置に彫刻されているものは初めて見た。
一関に戻って友人と合流し、駅の裏手の居酒屋/小料理屋の「喜の川」さんへ飛び込みで入ってみる。
地酒にもこだわりがあるようで、その日のメニューには原酒や無濾過、山廃などの文字が並ぶ。
地元のお酒「関山」をかっぱかっぱと飲んでいて相当いい気分になった。
隣に妙にノリのよい酒好きなマダムが座ったのだが、
マダム曰く、地元でも指折りの店で普通なら予約しないと入れないのだそうだ。
たしかにお料理もお酒も美味しいお店で大正解であった。