DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on

秋元康企画、高橋栄機監督 『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on』
AKB48のドキュメンタリー映画である。
ちゃんと映画館で観たので感想も長めです。

ふたつの大きな軸があって、ひとつは3.11の震災と復興支援の話。
もうひとつは大きなプロジェクトの中で彼女たちが奮闘する話。

ひとつめの復興支援の話は、被災地の映像と
メンバーの中で唯一被災して、その直後に研究生としてAKBに入って
復興支援に同行する女の子をメインに撮影されている。

話が話なだけに終始泣きっぱなしであったが、
その時の興行を振り返って、峯岸みなみが
「ちいさな女の子が、お店で買ったのではなくて
そのへんで摘んだような野の花をわたしてくれて
それがすごく嬉しくて
なるべくその子に目線を合わせようとして
しゃがむだけじゃなくて、もうステージにぺったりすわって
花を受け取って握手をしたのだけど、
今おもえば
たいして高くもないステージだったのだから
ちゃんとステージから降りて
その子をぎゅって抱きしめればよかった
それが今でも心残りだ」

というようなことを語っていて、もう号泣してしまった。
人生は、そういう小さくも切ない後悔が降り積もってゆくものだよね。

ふたつめは総選挙とかドーム公演などの大きなステージを軸にした話で
最初は、歌手になりたいとか、女優になりたいとか、自分の夢を
AKBを踏み台にして叶えようとしていた女の子たちが、
やがて大きなプロジェクトに飲み込まれていくうちに
どんどんエゴの壁が融けていって、究極の利他的存在になっていく。
その姿は、声と限られたビジュアルだけでディーヴァと呼ばれる初音ミクを連想させた。
美空ひばりから今日に至るまで、いつの時代もアイドルはそういうものなのかもしれないが、
とくに今は、こういうのが求められているのだなあと思う。

こんなことを言ったらその筋の人に怒られるかもしれないが
テオ・アンゲロプロスの映画を見たような倦怠感だ。
長くて美しい、かなしい夢を見たあとのような印象の映画であった。

DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on” への4件のフィードバック

  1. あのみーちゃんの花の逸話のところは泣けたねぇ。
    前回よりも泣き所が単純になったぶん、感動も深かったかな。

    あと、去年のドキュメンタリーと比べても何段も上のステージに駆け上っていったのが
    わかるんだよね。それがまた感慨深くて。

    AKBって存在そのものがドキュメンタリーというか、
    だからなんか目が離せないんだよね。
    ステージだったり楽曲だったりという完成形を見たり聞いたりして楽しむというのは
    楽しみのうちの極々一部に過ぎなくて、
    むしろそこに至るまでの過程であったりその後の顛末だとかのほうが
    より興味深いものがあるんだ。
    ドキュメンタリーとの相性がいいのもこの辺が理由なのかなー。

  2. ゐさん
    去年のドキュメンタリーはNHKでやったTV版のほうしか観てなくて
    映画の方も観たくなった。
    西武ドームの舞台裏は野戦病院みたいだったけどw
    究極に利他的なものの集合体みたいになっていくのが
    すごかったなー。もう、自分が何かを表現したいとか
    こういう音楽が好きだとか、そういうものが一切ないのに
    何かを表現しているってのがすごいわあ、まさにアイドルだわあと思った。

  3. 野戦病院、もしくは地獄絵図という感じだったねぇ。

    利他的、そういう視点ではみてなかったんだけど確かにそうかもね。
    でも宗教的であったりたり道徳的であったりというものに
    裏打ちされてる感情というよりは
    もっと動物的本能に根ざしてるというか、
    小動物の群れが種の存続をかけて肉食獣に挑むようなそんな、
    理性を超えたなにかを感じたなぁ、あのドーム公演では。

    いつかはここから巣立っていくことを悟っているからこそ、
    今ここでAKBを潰していくことはできない、
    そんな凄みがあったわ。

    アイドルでいること自体が表現作品、もしくはドキュメンタリーなんだね。

    去年の「映画のほうは今思えば多少予備知識があったほうが楽しめるのかな。
    選抜クラスメンバーのインタビューも長いのでファン向けの作りってかんじ。
    ツタヤでレンタルもできます。
    うちのでよければこんど貸します。

  4. 西武ドームのくだりは、すごいなあと思う反面
    オトナたちは何をしているんだ、という憤りのほうが先にきてしまったよ。
    もちろんやりきった達成感を与えることも重要だとは思うけど
    自分たちの企画の甘さや、彼女たちの健康管理を棚にあげすぎではないかと。
    映画だから編集の仕方でそう見えてるだけかもしれないけどね。

    アイドルは存在自体が表現、というのはものすごく納得。
    それが誰もが振り向くような子じゃなくて、わりとふつうの子たちが
    ああやって努力してきらっきらしていくのがAKBの凄みだと思う。
    1本目の映画、今度貸してくださいませ!

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