フランス文学概論の、たしか第1回目の講義だったように思う。
西谷修氏は突然にイコンの話をはじめ、パラジャーノフの「ざくろの色」を紹介した。
当時、こむずかしい映画など見たこともなかった私は
この映画に心酔した。
シュルレアリスムを体系的に知る前だったので
彼がシュルレアリスムの作家に分類されることも知らなかった。
10年以上過ぎ、念願のアルメニアを訪れた。
「ざくろの色」の撮影場所だったサナヒン修道院、ハフバット修道院にも行くことができた。
アルメニアに行くと、教会、土産物屋、そこかしこで柘榴のオブジェが売られている。
木彫りのそれは、塗料のせいで妙にぬらぬらと光っていて
割れ目からのぞく実はグロテスクですらある。
そんな柘榴がアルメニアのシンボルなのだという。
そうか、だから「ざくろの色」なのか。
そして、彼が終の住処に、と選んだ場所に建つ
瀟洒な館で、彼の作品を見た。
Sergei Parajanov Museum |