the wind-up bird chronicle

村上春樹『ねじまき鳥クロニクル第I部泥棒かささぎ編』(新潮社)読了
飲みの席で話題になったので読んでみた。
ふつうよりも太めの濃い緑色のスピン(栞紐)が素敵だなと思っていたら、
丁度、学校で先生から「新潮社だけは今でも文庫にスピンを付けていて、それが新潮のこだわりなのだ」という話を聞いて妙にタイムリーだな、と思った。
さて、さまざまな人が語るのだが、
私にもこのように語ることがあるだろうかと考える。
間宮中尉ほど壮絶ではないが、人に聞いて欲しいと思いつつ
語るべき時がくるのに何年もの時間を要する物語は
誰にでもあるものだろう。
私にも端折ったり、言い澱んだり、あるいは忘れたりしているうちに
真実がどれほどのものだったのかわからなくなってしまった物語がある。
でも登場人物たちのように迷うことなく語るには
(登場人物たちも真実を全て語っているわけではないが)
もっとうんと時間が必要なのだと思う。
整理する間もなく蓋をして、長いこと暗い処に置いてあるので
発酵しているのか腐っているのか、私にもわからない。
まだまだ八月になると目の前が鮮血で染まったような
真っ赤な夢を見る。