le pave de l’ours

堀江敏幸 『熊の敷石』(講談社)読了。
学生の頃、堀江氏は非常勤講師として
わが母校わが学科の教壇に立っていらした。
在校中に氏が『おぱらばん』で三島賞を受賞され
仏文の教授たちと喜んだりしていたので、よく覚えている。
密かに活躍を喜びつつも未読の作品が多くて
何故か常々申し訳ないと思っていたのだった。
「ああ、あるあるこういう状況ある」とか
見たことも聞いたこともない風景や食べ物や町の様子を
これ以上ほかの単語は思い浮かばない、というくらい
正しく美しい簡潔な日本語ですっぱり描いている。
当時、ほかの先生が氏を評して「小林秀雄みたいに美しい日本語だ」と
形容していたが、なるほどそうかもしれない。
モンサンミシェルの風景や、ワインやタルトの描写を読んで
またフランス熱が再燃…(でも土地と身体の相性が悪いんだよな…)
フランスには「大きなお世話」とか「ありがた迷惑」という意味で
“le pavé de l’ours”(熊の敷石)という言い回しがある。
以前、辞書で「pavé」の項目を調べたときに見つけて
「どういう関係があるのだろ?」と疑問だったのが解決した。
「新居に熊の形の敷石なんか貰ったら迷惑」てな意味かと思ってたが
出典はラ・フォンテーヌの寓話だそうで、もっとグロい話。

夜はkircheのライブへ。
ずっと聴きたかった新曲「砂のレース」が聴けてかなり感動。
メロディだけは何年も前から知っていたけれど、
数年越しで詞がついたものを拝聴する。
これからはサウンド面でブラッシュアップされていくのだろう。
こういう形で自分の中で更新されてゆく音楽もあるのだ。