襤褸


いつでも、実体のないものに悩まされている
存在自体はもう忘れられてもよいものなのに
わたしのなかの他者が、それにまつわる幻想を作り出してやまない。
街路樹にひっかかった洗濯物みたいに
手の届かないところへ飛ばされて
雨風にうたれて朽ちている
それなのに、ボロボロになってもなお
枝に絡み付いて離れない。
飛ばされてくる前は、あんなに大切にされていたのに。
風に弄ばれ、刻々とカタチを帰る襤褸を見て、
私はいろいろなものを思い描いてしまうのだ。