花ざかりの雨の谷中

桜にはじまり、谷中の路上ではこの季節、花絶ゆることなし。
ついこの前まで、角の家のジャスミンがいやに強く香るなあと思ったら
もうあっというまに消えていて、今度は梔子の花が
甘ったるい芳香を放っている。
私が生まれたときに、いなかの家の庭に植樹した
大盞木(マグノリア)も、近所の寺にある。
大仏さまを隠すほどの大きさに伸びて
人の顔ほどの大きさの白い花も咲いている。
これもたしか好い香りがする。
6月の花といえば紫陽花だ。この花を見るたびに
「酸性土壌では青い花、アルカリ性の土壌では赤い花…あれ、逆だっけ。」
と、理科の授業のような悩ましい気分になるのであまり好きではないけど
近所の「乱歩°」の玄関に咲いている紫陽花は、なんども
微妙な色あいで美しい。

隣の寺の壁にも紫陽花の古代種のような、珍しい花が咲いていたが
これはもう終わりが近いもよう。紫陽花の輪郭だけ残したような咲き方で
色はアイボリー。これがガクアジサイというものだろうか。