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by gones


こんなアパアトメントが、昔は家の近所にあった。
大正時代だかに建てられたモダンな建物だった。
階段の踊り場から外を見る窓は丸く、手すりには
どことなくアールデコの味付けがなされていた。
中庭には棕櫚や羊歯が茂っていて、道に面した下段には
春と秋に大輪の花を咲かせる薔薇の木があった。
向かいにも古い教会があり、そこの燭台は
さる高名な聖職者から賜ったものだと、司祭は自慢げに
話していた。
そのアパアトメントも教会も今はもうない。
正確に言うと、再建された。
東京の風景がかわっていくのは仕方ない。
もともと木材の文化で、鉄骨の家の耐久年月だって60年がいいところだ。
わたしたちがノスタルジアを感じるのは
古い古いと言っても、せいぜいが明治以降(おもいっきり近代)で
京都やヨーロッパの古さとはケタが違う。だから建築史的な価値はそんなに高くない。
この国には地震も戦災も地上げもあったから
ただでさえ絶対数が少ないところにきて、
老朽化した建築が壊されるのは必定。
たしかに見慣れた風景が消えるのはさびしいけれど
今ある建物だって時間を経てどんどん味わい深くなる(ものもある)ではないか。
有明だって台場だって、きっといい場所になる。
そういう風景を探しに行こうと思う。