「激闘録ひとでなし」

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「激闘録ひとでなし」読了。聖飢魔IIの舞台裏をつづった本。今まで、あまり舞台裏には興味がなくてウラビデオも意識的に見ないようにしていた。わたしのなかではあれは地獄から這い出てきた悪魔であり架空のキャラみたいなものだったから、あんまり現実的なおっさん見せられてもな、ってのもあり。
しかし読んでみると本当に面白い。バブル期からそれがはじけるあたりのメジャーの音楽シーンってこんなだったんだ、というのがよくわかる。聖飢魔IIではなく、RX(リズム隊)のソロアルバムを出す予算が2000万円て。今では考えられないだろう。半分以上はプロモーションだろうけど。

それともうひとつ興味深かったのは96年ごろに活動が停滞して本当に本当に解散の危機があったこと。96年って何してたかなって考えたら特撮ジャンルにドハマリしてて正直ちょっと離れてた時期ではあったので見事にリンクしている。それだけ求心力のあるイベントがなかったから、そっちに行ってしまったとも言える。著者は低迷期をスキャンダルやモチベーション低下やマネジメントに原因があるように書いてるけれど、大きな原因のひとつは不景気だったってのもあるんじゃないかな。この頃わたしは大学生だったけど就職氷河期で大変だったし、聖飢魔IIが解散した翌年に就職したが、周りの国内メーカーはばたばた潰れてた。

不景気なときに売れるものが絶対的に良いものとは限らない。売れているものというのは時代の空気をつかまえただけだと思うし、聖飢魔IIって歌舞伎みたいなもので、長い歴史のなかで歌舞伎にも浮き沈みがあったように時代の空気にあわない時期もあったんだろう。お金のないなかで作り出すものはハングリー精神は醸成・反映されてるかもしれないけど、ケレン味のあるロックな集団に貧乏臭いのは似合わないし。制作者側としては一時期しょぼくしょっぱくなってたのかもしれないけど、私には気づかなかった。気づかせないまま終焉に向かって行って、ものすごく美しい最後を見せてくれたし、その後の期間限定再集結でも最高に楽しいお祭に参加させてもらった。

この本を読んでウラビデオ2も見てみたが、和尚が「99年で解散したときはなくなったっていう感じだったけど、再結成した今回は聖飢魔IIはなくなるというものではなく、聖飢魔IIは聖飢魔IIとして存在していて、ぼくらが仮にいなくなってしまったとしても、聖飢魔IIは未来永劫残るものなんだ」っていうことを言っていて、それを実感する。ほんとうに伝統芸能の域になっているんじゃないかな。だれか襲名して続ければいいのに、とたまに本気で思ってしまう。

今でも大好きなバンドだ。

追記
この本、すごく面白いんだけど誤字が多すぎる。再版することがあるなら校正がんばってほしい。

追記
2016/2/1に電子書籍で再版とのこと。めでたい。